呼吸器内科
呼吸器内科は、肺や気道などに関する病気を扱います。咳や呼吸苦、痰、胸痛などの症状について、適切な検査をし、治療を行います。
病名としては、気管支喘息・咳喘息、肺炎、肺気腫・慢性閉塞性肺疾患(COPD)、非結核性抗酸菌症、間質性肺炎、肺がんなどです。
単なる風邪だと思っていたら実は喘息(咳喘息)だった、咳が長く続いているだけと軽く思っていたら肺癌、肺気腫・慢性閉塞性肺疾患(COPD)だったなど、重大な疾患が潜んでいる場合もあります。
こんな症状ありませんか?
- 長引く咳
- しつこい痰
- 息苦しい
- 呼吸をすると、ヒューヒュー ゼーゼーという音(喘鳴)が鳴る
- 少し歩いただけでも息が苦しい
- 胸のあたりが痛いなどの症状がある
- 禁煙したい
咳喘息・気管支喘息
呼吸の通り道である気道(気管、気管支)に炎症が起こり狭くなり、呼吸が苦しくなる状態(喘息発作)を繰り返します。
喘息の患者さんの気道は、症状がないときでも常に炎症をおこしており、健康な方に比べ気道が狭く、空気が通りにくくなっています。
日本人の10~15人に1人が喘息の患者さんと言われています。
喘息の憎悪因子
- 喫煙
- 風邪などの呼吸器感染症
- アレルゲン
- 大気汚染
- メタボリックシンドローム・肥満
- ストレス
- 気候の変化
- 職業暴露 など
長引く咳・咳治療
肺炎
肺炎は、肺の組織に炎症が起こる疾患の総称です。通常、細菌、ウィルス、真菌、又はほかの微生物が原因となります。肺炎の症状には、発熱、咳、胸部の痛み、息切れ、疲労感などがあります。特に高齢者の方や免疫機能が低下している方、慢性疾患をお持ちの方は重篤な合併症を引き起こす可能性がありますので早期発見・適切な治療が必要です。
診断は症状や身体診察、レントゲン検査、必要に応じてCT検査や血液検査、時には痰の検査などを通じて行われます。治療は原因に応じて抗生物質や抗ウィルス薬の投与、症状に対する対症療法などが行われます。今年は若年層を中心にマイコプラズマ肺炎が2016年以来、久しぶりに流行しています。次の項でマイコプラズマ肺炎についてご説明致します。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、接触・飛沫感染することで感染し生じる肺炎で潜伏期間は2~3週間と長いのが特徴です。若年層(5~25歳)に多く見られ、感染すると風邪の時と同じような症状がみられます。普通の風邪が上気道(喉など)に炎症が多いのに対してマイコプラズマ肺炎では下気道(気管支や肺)に炎症を起こすことが多いです。また、採血では通常体に感染があると上がる数値の1つである白血球数の増加がみられないのも特徴です。
普通の風邪だと思っていたが、なかなか熱が下がらず長引いている。昼は調子が良いのに夕方、夜になると熱が出てくる。激しく乾いた咳が続いている方はマイコプラズマ肺炎の可能性も考えられます。当院ではマイコプラズマ肺炎の確定診断として咽頭ぬぐい液で抗原検査(15分程)と必要に応じて胸部レントゲンや胸部CT検査、血液検査を実施しています。
好発年齢:健康な若年層(5~25歳)
症状:発熱、頭痛、全身倦怠感、激しく頑固な乾性咳嗽(痰は少ないことが多い)
治療:抗菌薬の投与
マイコプラズマ肺炎と診断されたら次のことに気を付けましょう!
- 流水や石けんでこまめに手を洗い、自分専用のタオルで手を拭きましょう。
- 咳やくしゃみをする時には口と鼻をハンカチでおおう、場面に応じてマスクを着用する等の咳エチケットを心がけましょう。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。最大の原因は喫煙です。タバコの煙を主とする有害物質を、長期に吸い込むことで引き起こされる進行性の炎症性肺疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。タバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症が起きて、咳や痰が出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。また、気管支が枝分かれした奥にある肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。歩行時や階段昇降など、軽く身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や、慢性的に出る咳や痰が特徴的な症状です。呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音が鳴ったり、発作的な呼吸困難など、喘息の様な症状を合併する場合もあります。放置するとぜん息発作と同様の「おぼれるような」息苦しさに見舞われます。
喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、治療としては禁煙が基本となります。増悪をさけるために、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。薬物療法の中心は、効果や副作用の面から吸入薬が推奨されています。気流閉塞が重症で増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用します。非薬物療法では呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や、腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。低酸素血症が進行してしまった場合には在宅酸素療法が導入されます。
痰に血が混ざっているとき考えられる疾患
肺結核
結核菌が肺や気管支に感染することで起こる病気です。
結核菌が肺胞領域まで到達・増殖し、そのうち10~23%において、肺結核を発症します。
糖尿病、がん、低栄養の方、免疫抑制剤・副腎皮質ステロイド・生物学的製剤を使用している方、胃切除後の方、HIV感染している方など、免疫力の低下した方に発病しやすいと言われています。
症状としては2週間以上続く慢性の咳、体重減少、倦怠感、血痰や喀血などが挙げられますが、これらの症状が乏しく発見・治療が遅れるケースも珍しくありません。
非結核性抗酸菌症
抗酸菌のうち結核菌以外の抗酸菌への感染によって引き起こされる病気を「非結核性抗酸菌症」と呼び、その90%以上をMAC菌感染による肺MAC症が占めます。
MAC菌を含めた非結核性抗酸菌は、結核菌とは異なり、ヒトからヒトへと感染することはありません。
自然界の水回りや土壌、ほこり、水道・貯水槽などから誰でも吸引しており、数年から10年以上をかけて徐々に進行します。
基本的に予後は良好ですが、慢性の咳、血痰、呼吸不全などを起こすこともあります。
気管支拡張症
気道の壁が何らかの影響で拡張し、元に戻らない病気です。
先天性(生まれつき気管支が拡張)のものと、重度の呼吸器感染症(肺結核や細菌性肺炎など)や慢性的な呼吸器感染症(非結核性抗酸菌症など)、関節リウマチやシェーグレン症候群などの膠原病、真菌に対するアレルギー反応(アレルギー性肺アスペルギルス症:ABPA)などにより起こる後天性のものがあります。
拡張した気管支には、緑膿菌などの細菌が感染しやすく、咳や痰(血痰)、発熱、倦怠感、呼吸困難、体重減少などの症状が見られる事があります。
肺炎
細菌やウイルス、カビなどにより肺が炎症を起こし、咳、痰、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)、息切れ、発熱などの症状が見られます。
体力・免疫力が低下したときなどには特に発症リスクの高くなる病気です。
重症な肺炎になった場合には血痰が出現することもあります。
肺がん
肺および気管支の細胞から発生する癌(悪性腫瘍)を「原発性肺癌」と呼び、これに対し大腸癌など他の体の部位から肺に転移した癌を「転移性肺癌」と呼びます。
悪性腫瘍は良性腫瘍とは違い、正常な組織に浸潤し、破壊しながら増殖・転移するものをいいます。
一言で肺癌と言っても、肺腺癌・小細胞肺癌・肺扁平上皮癌・大細胞癌など多くの種類の肺癌が存在します。
また診断時点で早期のものから末期のものがあり、それぞれ全身への影響や治療方針が異なります。
しかしながら特徴的な症状はなく、咳、痰、血痰、発熱、息苦しさなど呼吸器症状としてありふれたが多く、転移するまで無症状である事もあります。
肺塞栓(エコノミークラス症候群)
肺の動脈に血液のかたまり(血栓)が詰まる病気です。
足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)により起こる事が多く、長時間座ったままでいたり、同じ姿勢を取り続けると血流が悪くなり血栓ができやすくなります。
動いたときの息苦しさから始まり、胸痛、胸の不快感・圧迫感、血痰、下肢のむくみなどの症状が出現し、呼吸困難に陥ることもあります。