先日、静岡市の姉妹都市であるアメリカ合衆国、インディアナ州のシェルビービルから我が家に留学生がホームステイしておりました。
言葉も文化も見た目も考え方も違う私達でしたが、やはり伝えたいと思う気持ち、分かりたいという気持ちは伝わるものですね。
診察に於いても通ずるものだと感じました。

さて、今回のスタッフコラムは低線量肺がんCT検診についてです。

日本において肺癌は部位別がん死亡数の第1位です。
2021年の肺癌年間死亡数は76212人であり年々増加傾向にあります。
しかし、自覚症状のない早い段階で発見することで治療の選択肢が増え、高い確率で完治することが期待できる病気でもあります。
肺癌の早期発見と治療により肺癌による死亡を減らすことは日本の医療における課題でもあります。

日本の肺癌検診は40歳以上の男女に対する胸部単純X線撮影(レントゲン)と高危険群に対する痰の細胞診で行われていることが多いですが、レントゲンによる検診と比較してCT検診により発見される肺癌は早期のことも多く、治療成績も良好であることが明らかになっています。

日本医学放射線学会による「画像診断ガイドライン」で低線量CTによる肺癌検診は、高危険群(男女50歳以上、喫煙指数(１日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上)に対して対策型検診として行うことが推奨されています。

胸部単純X線検査とCT検査

胸部単純X線検査は費用負担も少なく比較的簡単に行える検査ですが、早期の癌(小さな病変)を見つけるには限界があります。
理由として描出画像は平面的なので近接する臓器(心臓や血管、横隔膜や骨など)と重なり見にくくなることがあり、特に小さな病変に対して検出が困難です。
その点でCT検査は体を輪切りにした断面像であるので他の臓器との重なりもなく臓器の状態を立体的に見ることができるので、肺内部で細かく枝分かれする気管支や血管も鮮明にみることができ、胸部単純X線写真では見つかりにくい淡い陰影の病巣や、心臓や横隔膜と重なる病変を発見することが可能です。
また胸部単純X線検査の検診と比較して、より小さく、より早い段階で腫瘍を発見できることも国内外の研究で報告されています。

画面中央の小さなすりガラス結節は高分化型腺癌です。淡い影のため胸部単純X線写真では確認することができません。

低線量CT検診

肺がん検診におけるCTとは低線量CTを意味します。
低線量CTでは、放射線被爆線量を減らすため、通常のCT検査より照射線量を低減させて撮影を行いますが、肺にある陰影の存在の有無は十分に判断可能です。
画像の質は通常のCT検査に比べて劣るので、肺以外に存在する異常については、通常線量を用いる検査と比較して見つかりにくい場合があります。
つまり、低線量肺がんCT検診は「肺癌を見つける為の検査」とご理解下さい。
また、すべての肺がんがこの検診によって発見できるわけではありません。

利益と不利益

利益

• より小さく、より早い段階でがんを発見することが可能です。肺がんが早く発見されることにより、有効な治療を受け、治る可能性が高まります。
• 肺がん以外の呼吸器の病気（肺気腫、肺炎、気管支拡張症、抗酸菌感染症など）や、肺以外の病気（心臓や血管の動脈硬化、乳腺腫瘤など）が見つかる場合もあります。

不利益

• 低線量とはいえ、放射線被爆をします。この検査による被爆によって将来的に悪性腫瘍が発症する恐れは非常に低いと考えられますが、ご自身の肺癌リスクと照らし合わせてご検討下さい。
• 喫煙習慣のある（あった）人を対象に低線量肺癌CT検診を行うと、3～6割の人に何らかの異常な陰影が見つかることが報告されています。このうちほとんどは肺癌ではありませんが、陰影のなかには、肺癌と非常に紛らわしいものもありますので、詳細な精密検査や定期的な経過観察が必要となる場合があります。
• 肺癌が発見されても進行速度が極めて遅いために、放置してもすぐには命に関わらない癌が見つかることもあり、その場合は長期の経過観察を必要とします。
• 低線量CTによる検診を行っても全ての肺癌を早期発見し救命することは望めず、限界があります。

こんな方におすすめです

• 40歳以上の方
• 喫煙指数（1日の喫煙本数×喫煙年数）が600以上の方
• 受動喫煙の心配がある方
• 血縁者に肺がんの人がいる方
• 有害物質を取り扱っている方
• 持続する咳や痰、などの症状がある方